欣幸【きんこう】とは、「心からよろこび、幸せに思うこと」という言葉の意味です。
あいあるグループでは、1年間スタッフが利用者様にかかわらせていただき、得られた感動を共有し、後世へ引き継ぎたいという想いがあります。
“心のたから“の光彩
地震当日、高齢者住宅に住むご両親が、どんなに不安がっているかと思い駆け付けたご家族。
ドアを開けるとそこには…ソファーに仲良く肩を寄せ合い座り、二人の膝の上には古いアルバムが開かれ、なんとも幸せでおだやかな空気がお二人を包んでおり、家族様の頭の中に「♪古いアルバムめくり~♪」の音楽が流れてきたそうです。
外は停電、断水と騒がしい中、お二人の世界はいつもと変わらず幸せな時間が流れているのを、両手に飲料水を下げ、汗を流しながら眺めていたとの事。
何事にも動じないお二人の強い絆と、それを見守るご家族の愛情を感じ、震災で不安な私の心が”ぽっ”と温かくなった、そんな出来事でした。
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【大賞とは?】
あいあるグループでは、職員から募集した感動した出来事(感動事例)からその年の”大賞”を選び、年賀はがきに印刷し、利用者様のご家族などへお届けしております。
グループホームに入居されているあるご利用者様は、今は病院に入院されております。
そんなある日、病院から一本の電話がありました。
ご家族様からのお電話でした。
「退院の目途が立たず、本当に退院できるかもわからないので不安。」と話されておりました。
今の病院に転院される前には別の病院に入院されていた経緯もあり、病院とホームの対応の違いも大きかったようです。
ホームで生活しているときは表情も穏やかで、本人も安心して生活できていたこと。
家族の思いとしては今後もできるだけホームに戻って暮らしてほしいとお聞きしました。
ご家族は面会でホームに立ち寄った際の、我が家のような温かい雰囲気を感じ、
「いいとこ見つけたね。」と喜んでいたそうです。
本当にありがたく、優しいお言葉を頂戴いたしました。
私はT様と触れ合うたび、あの日のことを思い出します。
遡ること2年前。
入居時にご家族からあったT様のご紹介では、「一度話し出すと止まらない」とお聞きしており、”きっと、明るくてお元気な方なんだろな”と考えておりました。
そしてT様との初対面。
「・・・・・。」
T様は無口で気力も少ないご様子。
まるで心を閉ざして暗闇のなかにでもいるような感じでした。
他の利用者様からも「あの人の声は聞いたことがない」とのことでした。
時間をかけ職員や利用者様と交流を図り、ご本人も懸命にリクリエーションやリハビリを続けます。
月日が流れて今。
フロアにはT様の笑顔と軽快なお話し。
困っている他の利用者様にも手を差し伸ばし励まします。
T様はこの時、まぎれも無く「グループホームの長女(家族の一員)になったんだ」と感じました。
ご家族からも「昔を取り戻した」と喜んでいただけました。
今後も私たちは、いったいどれだけ多くの方の「昔をとりもどせる」のかと楽しみになりました。
61歳になるS様は、グループホームに入って早3年。
すっかり生活には慣れたご様子でしたが、若いので身体を持て余している感じがしておりました。
暇になると他のお部屋を行ったり来たり、ホームのおやつをこっそりつまみ食い。
ある日職員が食事の準備中、丁度そばを通ったS様に、
「だれかお手伝いしてくれないかな~」と冗談を言ったところ、うなずいて台所をうろうろ。
「お味噌汁を作ってくださらないかな」というと、「うん。うん。」とS様。
まさか作れるとは思わず見守っていると、なんと見事に味噌汁を完成させました!
味噌加減も丁度良く、わかめ入り。上々の出来栄えです。
職員が驚いているとS様は「やる。やる。」と鍋を指さしました。
その日以来、毎日具材を選んで味噌汁やスープを作ってくださいます。
やがて”お手伝い”から、職員がするような”仕事”もお願いできるようになり、
お部屋のうろうろやつまみ食いもなくなり元気に職員と働いてくれています。
お身体も大きく、少しだけ強面のA様。
ご入居して初めのころは、職員が声をかけるとジロッと見ては無言。
運動の声掛けにも応じていただけず、何度か声をかけると怒られてしまいました。
デイサービスに参加の日も、一日何もせずにすぎてしまうこともありました。
しかし、あの手この手で怒られながらも関わり続けると、少しずつ耳を傾けていただけるようになりました。
それでもまだ自室での個別運動はなかなか行っていただけませんでしたので、どうしたらいいかと悩んでいたある日。
たまたまお部屋の前を通りかかると、ベッドに座りながらご自身でテレビ体操をされていました。
うれしさがこみ上げて、心の中で「やったー!」と叫んでいました。
利用者様を信じてあきらめず、関わり続けることで大きな感動をいただきました。
やっぱりこの仕事をしていてよかったと思える瞬間でした。
数年前にご入居されたAさんは認知症です。
ケアを嫌がりコミュニケーションを嫌う。
会話も成立せずにその表情は硬かったです。
それでも毎日の会話から少しずつ信頼関係ができてきました。
初めのころの頑なな表情がうそのように柔らかくなり、いつからか、こちらがその笑顔に癒され励まされ、元気をもらうようになりました。
時には母のように温かく満面の笑みで、
「いいの、いいの。あなたの思うようにすればいいの。私がちゃんと見てるから、頑張んなさい。」と励ましてくれます。
すると私も「よし!頑張ろう」と元気が湧いてきます。
介護の仕事は決して何かをしてあげるものではありません。
利用者様から色々なことを教えてもらいます。
いつも尊敬と敬意をもって仕事にあたりたいと思いました。
介護の仕事にたずさわって長い年月が経ちます。
その中でも一番うれしいこと。
それは「ありがとう」という言葉をいただくことです。
ご入居者様のケアをさせて頂く仕事にたずさわって、こちらこそありがとうという気持ちなのですが、仕事(お洗濯や掃除など)が終わると、
「ありがとうね」 「助かったよ」というお言葉をかけていただくと、”この仕事についてよかった!”と、いつも喜びを感じます。
世知辛い世の中で、この「ありがとう」の言葉は、また明日も仕事がしたくなる、私にとっての魔法の言葉です。
介護の仕事をする中で、毎日自分の中のどこかで思ってしまうこと。
「忙しい。手が足りない…。」
こんな理由で利用者様が本当にやりたいこと、うれしいことがしっかりできているのかと、一人悩むことがあります。
そんな中でも、何とか皆さんが楽しんでもらえるように企画する外出行事やお食事。
ご利用者様がお友達同士でお化粧をしあっていたり、ちょっとおしゃれに服を選んでいる。
その表情はどの方もいつも以上にうれしそうです。
存分に楽しまれた後にご帰宅される際の笑顔を拝見していると、また皆さんに喜んでもらえたと、この仕事に就いたことに喜びと感動がこみ上げてきました。
介護という仕事の中には、もちろんつらいこともありますが、「頑張ろう」と思わせてくれる瞬間がたくさんあります。
目の不自由な方が入居されたときのことです。
”どのように対応すれば・・。”と心配と不安でいっぱいでしたが、頑張るしかありません。
最初は不手際で怒らせてしまうこともありましたが、少しずついろいろな事がわかるにしたがって、ケアもスムーズに行えるようになりました。
今ではスタッフの声を聴き分けてくださり、
「○○さんかい?今日もよろしくね。」
「なんだか、いつも大きな声で元気がいいね~。」
「今日は声が変だけど、疲れてる?大丈夫かい?」と気遣いの声をかけてくれます。
そんな時は疲れも吹き飛び、元気をもらうことができます。
歩くことが少し大変になってきていたK様。
入居されて日もたち職員とはすっかり顔なじみ。
そのK様が朝食にいらっしゃったとき、「朝食の忙しい時に悪いんだけど・・・。朝方部屋で転んでしまったの」と、申し訳なさそうにおっしゃっていました。
私が足早に駆け寄って見てみると、耳の裏側に血がにじんでおりました。
すぐに救急箱を取りに行き処置をしていると、「忙しいのに本当にごめんね」と謝るK様。
「大丈夫ですよ。」と声をかけ消毒し、ガーゼをしたままの朝食。
お部屋に戻るときに笑顔で振り返り、「本当にありがとう。ありがとうね。」とお礼を言ってくださります。
「あなたがいてくれてよかった!」のひとことで、一日仕事の疲れを感じませんでした!
体調を崩され入院生活を余儀なくされたT様。
体力の低下から、栄養を静脈から補給しなくてはならなくなってしまいました。
”母らしく生活してほしい”と強く思い悩む日々を送る息子様。
その心労はいかばかりでしたでしょうか。
そして”最後までこのグループホームで暮らすことが母らしい”と決意され、ホームに戻ってこられることに!
当初は物もうまく飲み込めず表情も乏しいうえ、お声を聴けることもありませんでした。
それでも職員は耳元で、何度もなんども繰り返しお話をし続けました。
あれはいつの日でしたでしょう・・・。
T様の口元がかすかに動き、「あ・り・が・・とう・・」と聞こえたのは。
遠方からご家族様も駆けつけ、母の元気な姿に涙を流されました。
「母をホームに戻して本当に良かったです。」
その一言は今も私たちの支えになっています。
シニアホームに長くご入居されておりましたが、残念ながらお亡くなりになったY様。
その納棺にスタッフ数名で立ち会わせていただいたときのことでした。
Y様はたくさんの趣味を持ったかたで、小さなことにくよくよされない、まっすぐな方でした。
旅立ちのためにお着物を召され、化粧をされたそのお姿は本当にお綺麗でした。
傍らのお孫さんの女の子が「おばあちゃん、かわいくなった」と笑顔で寄り添います。
その後もご家族が語る何気ない昔話を聞き、最後の数年間は家族以上に多くの時間を共にしてきた私たちですが、ご家族の絆の深さを改めて実感いたしました。